>>433 からの続き


 政権交代後で初めての大型国政選挙となった7月11日の参院選を約1ヵ月半後に控えた今年5月28日、東京・霞が関の警察庁舎で「全国警備関係
課長会議」なる会合が開かれた。全国の都道府県警で公安部門を担当する課長級の幹部を一堂に集めた会議であり、これを取り仕切ったのは日本の公
安警察組織の司令塔といえる警察庁警備局だった。

 会議では、警備局警備企画課の桝田好一課長(当時)が雛壇に立ち、居並ぶ全国警察の公安担当課長に向けて次のような指示を発している。

「不安定かつ不透明な政治、経済、社会情勢下で行われる今回の参院選は、警備警察(筆者註・公安警察とほぼ同義)の情報力を示す絶好の機会だ。どの
県においても、貢献すべき情報は溢れている。
中でも幅広情報については、各県警幹部の意識や取り組み姿勢が成果を左右する。各位におかれては、自らも率先して情報を収集するのだという意
気込みを部下に示し、強力な指導力を発揮していただきたい」

■国会運営から口蹄疫まで

 警備企画課長が目前に迫った参院選に向けて収集を厳命した「幅広情報」とはいったい何なのだろうか。同じ会合で桝田課長は、「社会全般の諸情勢
を洞察し、治安に与える影響について分析を加え、その成果を警察運営の高いレベルに反映させるためのもの」と説明しているが、これだけでは少々
分かりにくい。警察庁警備局の元幹部が解説する。

「警備・公安警察は従来、日本共産党をはじめとする左翼諸党派や右翼団体、または外国諜報機関の活動などをウォッチし、それらに関連する情報の収
集にあたってきました。しかし、もっと幅の広い情報、従来の活動からはこぼれ落ちてしまっているような情報まで広範囲に集めはじめたのです。こ
れを警察内部では『幅広情報』と呼んでいるんです」

 さらに、警視庁公安部の中堅幹部はこんな風に明かしてくれた。