月刊ニュータイプ95年4月号 庵野秀明 エヴァンゲリオン制作開始インタビュー

われわれがガイナックスを訪れたのは1月下旬。すでに新番組「新世紀エヴァンゲリオン」の制作は1、2話の作画作業の大詰めに入っていた。
この取材の最初に、「ロボットアニメなんて、もう時代遅れだと思いません?」と庵野秀明は言った。
これは刺激的な発言だ。

20年以上もの歴史を持つロボットアニメは、確かに新鮮なジャンルとはいえないだろう。
だが、そう思っている彼が、ロボットアニメに企画から参加し、監督をするのはなぜだろう。
「玩具会社がスポンサーにつかないロボットアニメを、テレビでやるのもいいなと思ったのも理由のひとつです」
メカのデザインなどに口を出すスポンサーがつくのなら、この作品はやらなかったという。
そして「ロボットアニメがパターンにはまっているから、それを壊したかったのかな」とも語る。
当たり前になっている玩具会社とのタイアップでつくられるロボットアニメとは、全く違ったスタンスでフィルムを作ろうとしているのだ。

もともと、気負った気持ちでスタートした企画ではなかったが、実作業を始めてみると、かなり”ガチガチで重い(ハードでヘビーな)”ロボットアニメになってきているという。
ところで、この作品に関わりながら彼は次のようなことを考えているのだ。
「たとえば、20歳を過ぎてロボットアニメや美少女アニメが好きな人間って、本当に幸福なんでしょうか。もっと大きな幸福があることを一生知らないですめば幸せかもしれない。だけど、僕はそんな幸福に疑問を持ってしまったんです」
ロボットや美少女が好きなアニメファンには、ドキッとする話かもしれない。
主人公の碇シンジはオタクとして描かれることはないが、自分から周囲に積極的に働きかけることをしない、主体性のない少年と考えられている。
「この作品をつくりながら、そんな人間にとっての幸福ってなんなんだろうって考えてみたいんですよ。」
もちろん、それは作品の中でドラマとして語られていくはずだ。