VOYAGERは庵野が本人に頼み込んだらしい 拾いだがライナーノーツ
やっぱり歌っていたのはレイなのか…

《VOYAGER〜日付のない墓標》
松任谷由実さんと知り合ったのはザ・スクエア(現T-SQUARE)がオリーヴ・ツアーのバックを務めた1970年代終わり頃。スクエアの譜面を書いてた鷺巣がユーミンのツアー用譜面も書いたというわけ。
初対面は新宿の(旧)日本テレビ音楽院練習場。ヨネヤマママコさんと鏡の前でパントマイムの特訓に励む姿が印象深かった。当時ニューミュージックはおろか日本であれだけ凝ったステージは無かった。
伊集院静さん演出で本物の象まで舞台に登場するわ『8時だョ!全員集合」と同じ舞台スタッフで早変わりはあるわ…その後のエスカレートっぷりは説明無用。忘れるなかれユーミンという名前も、いや、キャラ自体すでに超アニメっぽかったのだ!
ご主人の正隆さんもご夫妻宅で紹介された。とにかく二人とも話が最高に面白く、気付いたら長居してる。今でも皆そうだろう。どこを切っても映画になる生活を半世紀も続ける世界有数のカップルだ。

庵野監督が<VOYAGER〜>を選んだのは感慨深い。偶然オリジナル録音時に近くにいたからだ。
当時、堀川まゆみと同じ事務所だった鷺巣のアシスタントがまゆみの弟で、その妹の麗美まで入ってきて《愛にDESPERATE》でデビューした。
で、ユーミン+マンタさんプロデュースとなりゃ、そりゃ遊びに行くでしょ、レコーディングに。そう《愛に〜》と《VOYAGER〜》発売日は1ヶ月しか違わない。ほぼ同じサウンド・メイキングを目の当たりにしてたのだ。
だから監督からの「まず完コピで」との難題にもうろたえない。37年前だろうが至近観察した同業者にとっては「あ、あの音ね!」ってなもん。
だが、ナメてはかかれない。麗美の編曲を手がけた時もマンタさん=プロデューサー、鷺巣=雇われアレンジャーの関係だったし、松任谷正隆という作り手の凄さは身にしみてわかってる。とにかく念には念を入れ完成までこぎつけた。
『破』の《翼をください》における「完コピ編曲=船山蒸紀+完コピじゃない追加ストリングス編曲=鷺巣」と同じで「完コピ編=CHOKKAKU+完コピじゃない追加ストリングス編曲=鷺巣」という構築。
ユーミンだかムーミンだか知らないが、こっちの歌姫なんかキティちゃんの林原めぐみだぞ!いや、そうじゃなく綾波レイですから。

90年代からご無沙汰してたマンタさんとロンドンのヒースロー空港で不意に再会した。頻繁にロンパリ往来する鷺巣がラウンジ奥のいつもの場所に座ろうとしたら、先に陣取ってたのが帰国便の搭乗を待つマンタさんだった。
こういう時、盛り上がるより、ほのぼのホッコリする…ユーミンもそーゆーとこに惚れたんだと思う。むかし飯倉の街角で、友人が駐車したランチア・モンテカルロに魅入るカーマニアのおっさんがいたので、よく見たらマンタさんだったこともある。純粋な少年のようなお方だ。
そして2020年12月、音を聴いてもらいながらZOOMでまたもや久々の対面。オリジナル録音時のメンバーを確認したり、その中から今回も斎藤ノヴ、八木のぶおが参加したことを報告した。
庵野監督は、宮崎駿とユーミンとのイベント同席時(すげー3ショット)に「<VOYAGER〜>使わせてください!」と直談判して快諾を得たということだが、マンタさんにもご挨拶出来て良かった。挨拶はしとけよホント。