庵野監督発言 2004年5月のNHK「トップランナー」より

エヴァンゲリオンは哲学的と言われるが、実際はそうではなく衒学的(げんがくてき)である。
衒学とは知識がある事を自慢する事であり、知ったかぶりという言葉が一番近い。
エヴァの一見謎に満ちたストーリーも、何か裏がありそうな雰囲気を出すための演出であり、実際に裏は存在しない。
また一見哲学的に思える内容も、パッと見た感じをかっこよく見せるための演出であり、実際はただ賢そうに見せているだけ(衒学的)で哲学的なわけではない。
自分にとってフィルム作りとはサービス業であり、客に何かしらの満足感を感じてもらえるものを作りたいと思っていて、
エヴァの衒学的なストーリーもそのためであるが、エヴァの場合はそのサービスが効き過ぎた。
エヴァが客にとって居心地の良い所にされ、現実逃避のよりしろ、現実からそこに逃げ込む装置のようなものにされているのが嫌で 、
もうこれ以上やっちゃいけない、何か目を覚まして欲しいと思い、
そのため映画では客に水を被せて目を覚まさせるような内容のものを作った。
そのまま居心地の良い所にずっと居させるというのも一つのサービスだが、エヴァの場合はもうやっちゃいけないと思った。
その方が客にとって良い事だと思った。自分にとってはそれもサービス業の一つである。