佼成病院裁判控訴審判決
立正佼成会附属佼成病院裁判の控訴審判決が2017年7月31日、東京高等裁判所42
4法廷で言い渡された。判決は控訴を棄却した。
佼成病院裁判は長女が立正佼成会と患者の長男夫婦を訴えた裁判である。長男が経管栄養
の注入速度を勝手に速めた。その後に患者は嘔吐し、やがて誤嚥性肺炎を発症した。また、
佼成病院は患者と長女の意思を確認せず、治療を拒否した長男夫婦の意向だけで、治療方
針を決めていた。
控訴審判決は一審判決とほぼ変わらない内容であった。一審判決は長男が経管栄養の注入
速度を速めたことを違法とした。それは控訴審の判決でも引き継がれている。しかし、病
院の管理責任は否定した。
説明義務についても判決は、キーパーソンの役割を説明していないとの主張に答えていな
い。判決は以下のような情報化社会を無視した前提を置くことで不合理ではないと主張す
る。
「控訴人を含めた患者の家族の全員に対して個別に連絡を取ることが容易な状況であった
ことを具体的に認めるに足りる証拠はなく、そうである以上、キーパーソンを通じて患者
の家族の意見を集約するという方法が不合理であるとは認められない」(18頁)。裁判官
が世間常識を知らないという世の批判に説得力を持たせる。
酸素吸入を夜間のみとした件については以下の理由で問題なしとした。「病状を改善させ
るために行う積極的治療とは言えず、その終末期医療における延命措置とみられるもので
あって、これも日中も行うか夜間のみとするかによって、医療水準を下回る医療行為とな
るかどうかが決せられるということはできない」(19頁)。緩和ケアの価値を無視してい
る。
原告の訴えは高裁には届かなかったが、佼成病院が経管栄養の管理が杜撰であることや家
族の一人にしか説明しない病院であることを明らかにした意義がある。
http://beauty.geocities.jp/souzoku_nakano/