東急不動産(仮称)ブランズシティ久が原計画 「奇跡の森」が消えた 朝日新聞2015年01月18日
大田区の住宅地にあった貴重な自然林=Google提供
ほとんどの木が伐採された林=大田区鵜の木1丁目
大田の住宅地 江戸から残る9千平方メートル
大田区の高級住宅地にあった自然林が昨年末、マンション開発のため伐採された。
江戸時代からほぼ手つかずの「奇跡の森」を残そうと、住民が立ち上がり、区も買収をめざしたが実らなかった。なぜ守れなかったのか。
 ◆マンション開発で伐採
 伐採されたのは、大田区鵜の木1丁目の個人宅の敷地内の林。
環状8号線に面し、田園調布に近接する好立地にかかわらず、約9千平方メートルのほとんどが樹木で覆われていた。
地域住民からは、地主にちなみ「天明(てんみょう)さんの森」と親しまれていた。
 区内最大とされたトチやイチョウなど幹の直径1メートルクラスの大木をはじめ、直径10センチ以上の樹木が581本あった。
 前所有者の一族は室町時代から続く旧家で、江戸時代は周辺の名主を務めた。住民や親族によると、「江戸初期に敷地に接してつくられた用水路が完成してから、ほとんど人の手が入っていない」という。
戦後まもなくの航空写真をみると、一帯は空襲を受けたが、この林が焼け残ったのがわかる。
 土地を所有していた親子はここ数年で相次いで亡くなった。
登記情報によると、2013年に別の親族に所有権が移り、昨年1月に東急不動産(渋谷区)に売却された。
同社は、12階建て、278戸の大規模マンションを計画する。昨年末に始まった基礎工事の準備で、樹木のほとんどは伐採された。
 反対運動を起こした住民グループの連絡役、宮川達雄さん(60)によると、開発については昨秋の住民説明会で初めて知った。
「あっという間に伐採されてしまった。住民にとってシンボルだっただけに悔しい。区には何とか残してほしかった」
 林は市街地にあるため、建物の高さや容積率など規制が緩い。同社によると、林にあった樹木で残されるのは、小さい10本程度になる見通し。