>>152-156
漁協を通して卸されスーパーに並ぶ「鮮魚」は、水揚げされ少なくとも一日は経っているので
小魚や稚魚のしらすなど日持ちしない分は釜揚げ(茹でしらす)にし、生しらすにも大根おろしや山葵などの薬味をかけて
生臭さを抑えて食べていたというのが実情で、料亭、小料理屋などに直で卸されていたのが本物の「生」しらす。
小売りされている生しらすや丼ものに、他の小魚やイカ、タコの子やカニが入っていないのは洗浄処理されている証左。

30年ほど前までは、駿河湾内の長い浜辺にはどこでも小型船が浜に引き上げられ、その脇には漁師さんが繕った漁網や
捕った魚を捌いて天日干しされている光景が日常風景だった。
桜海老やしらす漁も専業でやっている漁師はおらず、近海漁、遠洋航海から引退した年寄りの漁師の片手間仕事だったので
農家の無人販売と同じく、儲け度外視で安かったというのも喜ばれ一般市民の食卓にも上った要因。
時は流れ、バブル期の金余りで融資先を捜していた信組と、安さに目をつけた飲食店チェーンが大々的に売り出したのが
件のスマル亭を始めとする具材に桜海老やしらすを用いた一連の商品。

今では浜で揚げられた魚をそのまま小売りしている鮮魚店もなく、生食の桜海老やしらす、揚げたての丼ものを提供する
地元民が営む食堂も、飲食店チェーンの食材寡占に太刀打ちできず店をたたんでしまい見る影もない。
その飲食店チェーンも時代の波に抗うことはできず、以前に自分たちが仕掛けたのと同じ手法で自らの首を絞め傾いた。