「移民政策はとらない」としつつ外国人受入れを拡大し続ける、という最悪の移民政策 | HuffPost Japan
https://www.huffingtonpost.jp/naoko-hashimoto/gastarbeiter_a_23376626/
2018年03月05日

移民受け入れを拡大し続けるのであれば何が問題なのかを主眼として議論します。

1.西欧諸国が冒してきた大失敗をそのまま踏襲

2月20日の経済財政諮問会議にて安倍首相は、「移民政策はとらない」と改めて前置きした上で、外国人労働者の受け入れの更なる拡大策について具体的に検討するよう関係閣僚に指示したそうです。

現政権は、国際移住学的に全く通用しない「移民の定義」を提唱し、「移民政策ではない」と言う詭弁の下で外国人受け入れを拡大し続けていますが、
実は同じような政策を採ったのは日本政府が初めてではありません。
西欧諸国の多くも、第二次大戦後かなり長期にわたって「我々は移民国家ではない」という建前の下、「数年で帰る一時的出稼ぎ労働者」を大量に受け入れてきました。

その端的な例が(西)ドイツです。第二次世界大戦後の労働力不足を解消するため、ドイツは1950〜60年代にかけて180万人を超える外国人労働者「ガストアルバイター」を「期限付き」という前提で
トルコ、イタリア、ユーゴスラヴィア等から受け入れました。労働契約が切れたら母国に帰る「はず」だったので、ドイツ語教育や社会保障制度の整理などはほぼ全く行われませんでしたが、
予想に反して彼らは労働契約が切れても帰らず家族を呼び寄せドイツに定住していったのです。

移住研究で国際的に著名なフィリップ・マーティン教授が、「一時的出稼ぎ労働者こそ永住する」という名言を残していますが、ドイツで起きたのが正に「一時的外国人労働者」の永住化です。

私は、EU諸国の実務家が集まる専門家会合に唯一の研究者代表としてご招待頂いたことがあるのですが、その会合で出会ったドイツ移民難民庁(BAMF)の幹部の方が、
「もっと早くからしっかりした社会統合政策をやっておけばこんなことにならなかったのに・・・」とボヤいていました。同様にドイツ国内で難民支援に携わっている元同僚も、
「ガストアルバイターの時もユーゴ難民の時も、最初から語学教育とかオリエンテーションをちゃんとしておくべきだったのよ!」と嘆いていました。

今西欧諸国で大きな問題となっている社会の分断、階層化、社会保障制度の圧迫、移民地域の「ゲットー」化、更には「ホーム・グロウン・テロリスト」の出現まで、
それら全ての元凶は、「移民受け入れではない」と誤魔化し、社会統合政策を怠りながら大量の外国人受け入れを戦後50年近く続けてきた政策、そのものです。
そして、近年の安倍政権の外国人受け入れ政策は、その西欧諸国が冒してきた深刻な過ちの轍の上をそのまま準えています。

日本への移民受け入れ反対派の方々がよく「今のヨーロッパを見ろ!あんなことに日本がなっても良いのか?!」と声高に訴えられます。
その方々こそ、安倍政権に対して「もっと国としてしっかりした社会統合政策を実施しろ!」と要求すべきなのに、「移民政策はとらない」という詭弁に簡単に騙されてしまっているのでしょうか? 
何とも不思議でなりません。