中間貯蔵施設 除染土の有効活用も図りたい

福島第一原子力発電所事故に伴う除染で生じた土を中間貯蔵施設に早期に搬入する。有効活用も図る。それが福島の復興の加速につながる。
第一原発のある大熊、双葉両町に建設中の中間貯蔵施設で、本格的な運用が始まった。
除染作業ではぎ取った表土から草木などをふるい分ける分別設備や、遮水シートを敷いて水分が外部に漏れないようにした土壌貯蔵場のシステムが稼働した。
福島第一原発事故では、放射性物質が広範に飛散した。除染土の推計量は、福島県内だけで最大2200万立方メートルに上る。
中間貯蔵施設には、昨年度までに約23万立方メートルが運び込まれた。今年度は50万立方メートルの予定だ。

県内では、除染土の詰まった袋が、民家の軒先や農地などに山積みになったままだ。住民の生活の大きな障害になっているだけに、早期の撤去が欠かせない。
環境省は、学校のグラウンドに残る除染土の撤去を優先的に行い、来年度中に完了する予定だ。着実に実施してもらいたい。除染土がなくなれば、景観が戻り、心理的負担も和らごう。
除染土を運ぶトラックの往来の急増が予想される。人工衛星からの測位信号を用いて、渋滞対策などできめ細かな運行管理を行うという。安全第一で搬入を進めることが大切だ。
中間貯蔵施設の面積は、計画では約1600ヘクタールに及ぶ。8割を占める民有地のうち、環境省が取得できたのは半分ほどだ。
除染土を施設に集約させる必要性を、土地所有者らに理解してもらう努力が一層求められる。

除染土の総量抑制も重要だ。
土中に含まれる放射性物質は時間の経過とともに壊れ、放射線量は下がる。この性質を周知し、安全を確認した土は、可能な限り搬入以外の活用法を探るべきだ。
中間貯蔵施設に搬入する土の量が減れば、それだけ施設の面積を縮小させることができる。運搬車両の通行量も少なくなる。
南相馬市では、低線量の土を防潮堤や道路に使う実験が始まった。表面から奥深い部分に除染土を固めることで、外部の線量がどの程度低減するかを確認する。
飯舘村では、除染土を農地に敷き詰め、通常の土で覆う実証事業を進める。将来は、花などの園芸作物の栽培も目指す。
農地が整備されれば、避難中の住民が帰還する足がかりにもなるだろう。地域の実情に合わせ、除染土の使途を拡大したい。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20171127-OYT1T50077.html