首都圏の公立小学校で非正規教員として働く香川隆二さん(仮名)は、教員1年目のときのことが忘れられない。
大学4年の時に教員採用試験を受けたが不合格となり、翌年は地元の小学校で臨時的任用教員(常勤講師)として働くことになった。
だが、その1年目は散々なものだった。

「2年生の学級担任になりましたが、何をやってもうまくいきませんでした。
日々の授業も、子どもたちへの指導も自己流、見よう見まねでやっていましたからね……。
すぐに学級崩壊に近い状態となって、教頭先生にもクラスに入ってもらいながら、何とか1年を乗り切りました」(香川さん)

小学校では常勤の非正規教員の大半が1年目から担任を持つ。
比較的落ち着いたクラスを受け持つケースが多いが、時に校内人事のなりゆきで難しいクラスを持たされることもある。

何の研修もないまま、教壇に立ち続ける

「非正規教員は、何の研修も施されないまま、教壇に立たされ続けます。そんな仕組み自体に無理があるのではないでしょうか」と香川さんは振り返る。
結局この年はクラス運営で手一杯となり、教員採用試験の対策時間もろくに取れず、不合格となってしまった。

香川さんの学校にはもう一人、1年目の教員がいた。
同じ大卒だが正規採用、そのため「初任者研修」があり、校内でメンター役の教員から指導を受けたり、時に教育センターに出向いて講義を受けたりしていた。

「同じ1年目でも、職場での扱いがまったく違っていました。向こうは大事に『育成』されているのに対し、こっちは完全に『放置』されている感じです。
当時は、『試験に合格できなかった自分が悪い』と思っていましたが、今思えば少し酷い扱いだと思います」(香川さん)
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