北朝鮮による拉致被害者の早期帰国について子供たちに関心を深めてもらおうと、政府の拉致問題対策本部が開いた啓発イベントで、最終日の2日、企画・運営にボランティアで加わった

東京都立川市の市立立川第七中の生徒が加藤勝信拉致問題担当相と意見交換した。問題の風化が懸念される中、生徒らは「解決を願うだけでなく、被害者帰国への願いを多くの子供に伝え、広げていくことが重要」などと、それぞれの考えを語った。

 「『拉致問題は難しい』と子供に教えるのを後回しにしている。日本人一人一人が問題を知り、考えることが必要だと思います」。同校2年の滝田夢愛(ゆあ)さん(13)はこう訴えた。

 イベントは夏休みの親子連れを対象に開催。北朝鮮の被害者へ放送するラジオのメッセージや合奏の収録など、子供たちがなじみやすい体験型のコーナーを準備した。

生徒らは各コーナーを運営し、タブレットで拉致の経緯を学べるクイズアプリの設問も考えた。

 生徒らが問題を深く知る背景には同校の取り組みがある。これまで横田めぐみさん(53)=拉致当時(13)=の両親、滋さん(85)と早紀江さん(82)や、帰国した拉致被害者の蓮池(はすいけ)薫さん(60)の講演を開催。

授業で解決方法を議論し、作文を新聞に投稿している。

 「子供たちが拉致問題を知り、幅広い世代で世論が高まることは、拉致解決に欠かせない」と話す同校教諭の佐藤佐知典(さちのり)さん(58)は、めぐみさんが新潟市で拉致された当時、近所に住み、救出運動が始まった平成9年の当初から署名活動などに参加してきた。

 拉致を知らない若い世代が増える中、政府は小中高の授業で理解を深めさせるよう求めているが、実施は教育現場に任され、教員や生徒の理解の程度には差があるとされる。佐藤さんは「若い教員にも拉致への関心がない人は多い。継承に尽力していきたい」と危機感を持つ。

 3年の北條菜々子さん(15)は「拉致について私たちが学んだことを子供たちに分かりやすく伝えることも大事だ」と語った。

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