世界 2020年10月号
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育鵬社教科書の採択が激減。20世紀末から続いてきた中学校教科書における歴史修正主義運動=
新しい歴史教科書を「つくる会」による取り組みが瓦解の局面を迎えている。

「つくる会」系教科書の終焉――中学校教科書採択
                                    鈴木敏夫

 8月27日時点で判明している公立学校の育鵬社教科書の採択は、歴史で約1050冊、公民約2160冊に
とどまっている。育鵬社の歴史・公民教科書は、両方とも1万冊(採択率1%)に満たない「歴史的激減」は
確実である。

 「つくる会」は、自身の教科書発行にあたり、自分たちの教科書が教員の支持を受けることはないと見込み、
学校現場の採択権を認めない教育委員会採択を全面に掲げ、地方議会決議運動を展開した。これを
バックアップしたのが改憲団体の日本会議や「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(「教科書議連」)
であった。この議連は安倍晋三氏が政治家として台頭する重要な舞台の一つで、1997年の結成時に
事務局長に抜擢されていた。安倍氏は各集会で、「つくる会」系教科書を推薦し、自民党としても採択に
尽力するメッセージを伝えている。
 小山孝雄自民党参議院議員(後にKSD汚職事件で議員辞職)が、国会で教科書制度について「つくる会」の
主張そのままの質問を行ない、2000年9月、01年7月に教科書は「教育委員会の責任で採択する」文部省通知
を出すことになった。これ以後、一部の保守系首長が任命する教育委員が選定審議会の答申などを無視して
「つくる会」教科書を採択する「教育委員会採択」が続いてきていた。

(続く)