日本の軍隊がなにゆえ体罰に厳しいかと云いますと、明治維新で徴兵制をはじめたときにあちこちで
暴動とか起って大変なことになったからです。死人が大勢出ています。
徴兵制の軍隊が国民からそっぽを向かれては成り立ちませんから、
「 軍隊というところは、家族的で暖かくてとってもいいとこなんですよ。体罰なんてとんでもございません 」
と一生懸命宣伝したのです。口先だけで内容が伴ってないと、若者たちが故郷に帰って「 あれ嘘だったよ 」
って云われてまた暴動とか起きたら大変ですので、国民に愛される軍隊目指して頑張ったのです。

頑張ったからと云って体罰を完全に無くせたわけではないんですが、ともかく体罰は絶対禁止で
「 犯罪 」として厳しく取り締まったのです。やってたのは、あくまでも不法な「 私的制裁 」であり、
つまりは「 いじめ 」です。

明治維新で小学校ができたときにも、あちこちで暴動が起きて校舎焼き討ちとかされたんですけど、
戦前は何かというと父兄が学校に怒鳴り込んできて、生徒も徒党を組んで同盟休校とかするのは、
この流れなのだろうと思います。

学校も軍隊も、父兄にものすごく気を遣っていたことが、戦前の新聞を読むと判ります。
いまの父兄のように甘くはないので、へたすれば暴動で焼き討ちですから。
西洋的な学校だとか軍隊だとかの日本の伝統に反するシステムを庶民に受け入れてもらうだけでも
流血の騒ぎになったのに、さらに日本の伝統に反する体罰が受け入れられるはずもなく、
絶対禁止にせざるを得なかったわけです。

学徒出陣が始まる前の大卒の< 幹部候補生 >は歳も食ってて、妻子や仕事を抱えてるのに
強制的に将校にされて、三年兵以上と同じ不満を抱えて、彼ら自身が上官殴ったりの
非行を働いたりしますし。 そのために、体罰が「 犯罪 」だという観念が将兵全員
からなくなってしまいました。