警察庁のまとめによると、昨年も自殺した人が3万人を突破した。学生・生徒の自殺者は、
861人に上った。少子化にもかかわらず、これは、統計を取り始めた翌年の、1979
年の876人に次ぐ、過去2番目の多さだ◆高校生が215人いる。中学生も66人いる。
何とも痛ましい。「学校問題」や「健康問題」と動機が分けられているが、学校生活が苦
痛だという子もいるだろうし、重い病気と闘っている子もいる。最後の一歩を踏み越えさ
せてしまったものは何なのだろうか◆22歳で早世した大正時代の画家・村山槐多(かい
た)の、「いのり」と題した詩がある。槐多の作品を何点も所蔵する信濃デッサン館館主
の窪島誠一郎さんが以前、教育関係の雑誌に寄せた文章で紹介していた◆「あす一日この
ままに置いて下さい 描きかけの画をあすもつづけることの出来ますやうに」という一節
がある。最後は、「生きて居れば空が見られ木がみられ 画が描ける あすもあの写生を
つづけられる」で終わっている◆この時、余命2か月半。肺結核に侵され、喀血(かっけ
つ)を繰り返しながら絵筆を握り続けた。いつまでも空や木を見ていたいと、どれだけ祈
り念じていただろうか◆前途に絶望した、現代の少年の心を勇気づけるかどうかは分から
ないが、ぜひ、このような詩も知ってほしいと思った。

(2006年6月4日1時46分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060603ig15.htm