【産経(主張)】2006年6月18日(日) (2)
B型肝炎訴訟 国は早急に支援策提示を

 乳幼児期の集団予防接種でB型肝炎ウイルスに感染したとして、患者ら5人が国に損害賠償を求めていた「B型
肝炎」訴訟で、最高裁は予防接種とB型肝炎感染との因果関係を幅広く認めるなど、患者側全面勝訴の判決を
出した。
 最高裁判決の持つ意味は極めて大きい。肝炎対策の遅れを指摘されてきた国は、早急に具体的な患者支援策に
乗り出す必要があろう。
 最高裁第2小法廷の認定は、国の主張をことごとく退けるとともに、原告側が逆転勝訴した札幌高裁判決をさらに
一歩進める画期的な判決となった。B型肝炎に苦しむ他の多くの患者を勇気づける判決と高く評価したい。
 この訴訟は、患者と持続感染者(キャリア)と患者の遺族計5人が平成元年に札幌地裁に提訴した。1審では国の
主張がほぼ全面的に認められて、原告側が敗訴した。
 2審の札幌高裁は予防接種と感染との因果関係を大枠で認めたものの、2人については「予防接種を受けた最後
の時点」を除斥期間の起算点とし、賠償請求権(20年)がすでに消滅していると判断、請求を棄却した。このため、
双方が上告して争っていた。
 国側は感染と予防接種の因果関係について、「予防接種だけでなく、別の原因も考えられる」と強く反論したが、
最高裁は、「予防接種以外の感染原因はうかがわれない」とし、「予防接種時の注射器連続使用でB型肝炎ウイ
ルスに感染した可能性が高い」との判断を下した。
 また、もう一つの争点だった除斥期間についても、「損害は感染から相当期間経過後に発生し、除斥期間は接種
時でなく、発症時から起算すべきだ」という判断を示した。
 肝炎の予防接種は昭和30年代まで、注射器の連続使用、いわゆる回し打ちが行われ、B型肝炎感染の大きな
要因とされた。その後は注射器の連続使用は禁止されている。
 現在、わが国のB型感染者は、推定で約120万〜140万人という。これにC型肝炎者を加えると約350万人にも
なり、慢性化して長期化すると、肝硬変や肝がんを発症させる。
 国は感染者に最善の医療を尽くすとともに、医療費の経済的負担軽減など患者救済策を提示すべきだ。
ttp://www.sankei.co.jp/news/060618/morning/editoria.htm