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【読売】2006年6月17日(土) (2)
[B型感染訴訟]「医療行政の怠慢と断じた最高裁」

 医療行政にも大きな影響を与える判決だ。
 B型肝炎の感染原因をめぐる訴訟で、最高裁は、同じ注射器で複数の人に予防接種を行う状況を長く放置して
いた国に責任がある、と断じた。そして国に対し、感染した原告に1人当たり550万円を支払うよう命じた。
 日本には、血液を介してうつるB型とC型の肝炎ウイルスに感染している人は350万人いると見られている。そのうち
数十万人は、注射器が使い捨てでなかった時代に受けた集団予防接種が原因と推測されている。
 現実には、これらの人すべてが、使い回しの予防注射で感染したと証明することは難しいだろう。だが今後、相当な
数の感染者に対する賠償の問題が生じる可能性がある。
 判決は、民事上の時効は肝炎の発症時から起算する、とした。これは、予防接種を受けてから感染に気づかず20年
以上経過したとしても、国を訴えることができるとする判断だ。
 注射器の連続使用が感染を招く危険性については、遅くとも1951年には認識されていた、とした。当時の厚生省も
その前年に、1人ごとに注射針を交換するよう告示している。
 だが、最高裁は「1人ごとの交換または徹底した消毒の励行を指導せず、連続使用の実態を放置していた」と、感染
対策を軽んじた医療行政を批判した。
 厚生省が「針だけでなく注射筒も換えよ」と告示して徹底が図られたのは、やっと88年のことである。あまりにも遅い
対応だった。
 厚生労働省は、注射器の連続使用の危険性を過小評価した非を率直に認め、集団予防接種が原因と見られる
感染者は、迅速に救済するべきだ。
 肝炎ウイルスの感染者の中には、自覚症状が無いために、感染に気づいていない人が相当いる。
 早期に発見して適切な治療を続けていけば、大事に至らない場合が多い。だが放置すれば、肝硬変から肝がんへと
進行し、取り返しのつかないことになる。
 年間3万人以上が肝がんで亡くなっている。その8割以上がB型・C型肝炎ウイルスの感染者とされる。
 厚労省は、保健所での無料検査体制を拡充するなど、早期発見体制の強化に乗り出している。だが、PR不足も
あり、十分な効果は上がっていない。
 肝炎への対策が甘かった過去の医療行政を償うためにも、厚労省は肝炎ウイルス感染者の早期発見体制の充実に
取り組む必要がある。
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