信濃毎日新聞 社説 2007年11月10日
混合診療 患者の声聞き、論議を
http://www.shinmai.co.jp/news/20071110/KT071108ETI090004000022.htm

 公的医療保険で認められていない治療を受けると、保険適用の治療も全額自己負担になるのはおかしい−。
たった一人で闘ったがん患者の訴えに、東京地裁は国の政策の違法性を認めた。
 国は保険診療と保険適用外の自由診療を一緒に行う「混合診療」を原則禁止している。
地裁はこれを「法的根拠がない」と判断した。
 今回の判決は、医療保険制度の在り方に一石を投じるものだ。混合診療解禁には慎重に臨むべきだとしても、
患者の切実な思いに応える方法も探りたい。
 原告は神奈川県に住む男性である。2000年に腎臓がんと診断され、その後頭などに転移した。
保険で認められている治療に加え、適用外の免疫を高める治療も受けることになった。すると、
医療費は3割負担の月約7万円だったのが、すべて自己負担となる。毎月約75万円に上ることが分かった。
 厚生労働省が混合診療を原則認めないのは、保険が効かない自由診療が広がると、経済力によって受けられる
医療に格差が生じることを懸念するためだ。未承認の薬は国として安全性や有効性が確かめられないことも理由に挙げる。
 少しでも効く薬があれば使いたいのが患者や家族の願いだ。がんの再発患者は治療の選択肢が狭まるだけに切実だ。
未承認の薬の使用を求める声は根強い。