山陰中央新報 社説 2007年11月4日

医療崩壊 命の格差拡大は許されぬ
http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=444928033

 医師が去り、病院が閉鎖される。各地で医療崩壊が進み、悲鳴が上がっている。一番困るのは患者ら国民だ。
特に急性期医療は危機に直面している。産婦人科、小児科、救急で医師不足は深刻。これでは地域で子どもを産み、子育てができなくなる。
 勤務医が消えるように立ち去り、救急医療を引き受ける中小病院が減って、残る救命救急センターに過大な負担がかかっている。
こんな救急現場の惨状が十月中旬、大阪市で開かれた日本救急医学会の討論で次々に報告された。
 勤務医の労働実態は過酷だ。泊まりを挟んで、36時間の連続勤務もよくあるという。医療には限界があるのに、
患者や家族から過度な要求も増えている。医師は医療の安全に注意しつつ、多数の患者を診なければならない。
 激務で疲れ果て、突然辞めていく医師や看護師たちがあまりに多いので、医療現場で「立ち去り型サボタージュ」という流行語も生まれた。
 奈良県で昨年と今年、妊婦の救急車搬送で受け入れ拒否が表面化した。ある産婦人科医は「医師の人手が足りない。
妊婦の受け入れ拒否は日常化している。なぜ奈良県だけが大ニュースになるのか分からない」と言う。
 それを裏付けるように似たケースが各地で日々発生していることが、消防庁の調査で明らかになった。救急隊が昨年、
妊婦を搬送しようとして3回以上受け入れを拒否されたのが667件、搬送先が決まるまで救急車が現場で30分以上待機したのが千件を超えたという。