リコッタの姿と新しい名前にしばらく慣れそうにない
もちろん昇進は喜ばしいけれど、歳を取るほど変化を頭に馴染ませるのは遅くなる
数年後、十両格になったふんたを俺はすぐに受容できるだろうか
自分はずっと今の名前でいい、とふんたはかつて語ったらしい
彼を相撲界に呼び込んだ義兄さんの一文字を頂いているから思い入れも強いはずだ
いや、改名云々は些細な違いでしかない
白い木綿の一張羅から絹の装束に着替え、しなやかな両脚を裾と足袋で隠し
明るくなった土俵の上で取組を裁いたと思えばしばらく後に関取達を先導する
あの昇格は力士と同じくらい重いのだ、とリコッタの二日間に実感せざるを得なかった
今も、ほら、打ち込む指先とふんたを収めた視界が震えてる