そもそも、「犬は元気に走るもの」という考え自体が大きく捻じ曲がった考えであることを理解する必要がある。

この時点でかなりの人間が自分を変人扱いすると思う。

ただ犬の祖先とも言われている狼ですら、狩以外の時間で仲間と元気に走り回ることはない。
何故なら、走りまわることは身体に負担がかかり、ストレスだということを本能的に理解しているから。

確かに狩をする際は走る。ただそれはあくまで生存本能に基づき、
且つその本能を使わざるをえないほど空腹の場合のみに限定される。
そのため、そこまで空腹ではない場合は狼は獲物が近くにいても無視したり、
狩を簡単に諦めるという行動に移行するという調査結果が出ている。

ここで犬に話を戻すが、犬が狩をする行為をわざわざ誘発させる必要はあるだろうか?
答えは否。何故なら真っ当な飼い主であれば、ちゃんとした時間にちゃんとした量の餌を犬に与えるから。
そのため犬は狼のように1週間餌がない状態やその時の空腹度を味わうことはない。

加えて餌は人間が用意し、人間が与えるため、狩のような真似事も必要はない。
しつこく言うが、狩という行動はあくまで生存本能を使わざるをえないほどの状況で初めて使う
ある種「切り札」のようなもので、その切り札は同時にストレスを誘発する諸刃の剣でもあるということ。
もっと言って仕舞えば、人間社会に生きる犬にとっては「使う必要もない本能」であり、
「使わない方がストレスを生まないから都合が良い本能」ということ。

それなのにストレス誘発となる狩の真似事と同種の「追いかけっこ」、
「ボール遊び」、「引っ張りっこ」をすることは、狩と同じようにストレスを生むだけでしかない。
しかもそれを飼い主は犬とのスキンシップだと思って1日に1回かそれ以上行う。
それによって生成されるアドレナリンとコルチゾールの量を想像してほしい。
それの及ぼす犬の身体や精神にかかるストレスも想像してほしい。