(同上)

頭部が潰れて元の半分になった父親の瞳孔は既に開ききっていていた。
もっとも右の眼しか眼としての体裁を保っていないが。
むろん、呼吸、心拍もがあるはずもない。
その場で妹の夫により死亡判定となった。
一方、胸を撃たれた甥は時々口から大量の血塊をゴボッと吐き出していたが、全身を痙攣させて静かになった。おそらく肺挫傷、血塊が気道を詰まらせたのだろう。
妹の夫は冷徹に1分間に100回の人工呼吸無しの心臓マッサージを開始した。
もう一回血塊をゴボッと吐きだし、胸郭が動き出した。
どこかの中年無職とは違い医師免許をストレートで取得した医師というのはこういうものなのだ。
腹を打たれた甥は顔面蒼白となり同じく心拍停止となった。脾破裂による腹腔内出血だろうか。急遽こちらは母親と妹が人工呼吸と心臓マッサージとを開始したが1分間に100回を維持できなかった
救急車が甥達を病院に運んだが、腹を打たれた甥は死亡が確認された。もう一人も意識は戻らない。