かばんくんとは無関係の小説を書いてみた。

2022年春。
パンデミックのため延期されていた東京オリンピック・パラリンピックは大成功を収め、それをきっかけに日本経済にも立ち直りの兆しが見え始めていた。
そんな春に、のどかな霞ヶ浦の畔の町で起きた哀しい事件について話そう。・

医師国家試験に三回不合格になった45歳の男が父親と甥を殺した。
この男は中高一貫校とはいえ二流でスパルタ教育だけが取り柄のつまらない学校を出た後、15年かけて医学部に入学し、9年もかけて卒業したのだった。
既に知識を吸収し、思考によりそれらを智慧に高める作業をするには歳を取り過ぎているだけでなく、努力が全く出来なくなっていたため、医師国家試験という合格率9割の試験に毎年不合格になっているのだった。
逃避のため、未来の妻とまで呼んで執着しているアイドルのグッズを抱きしめて自慰行為を繰り返す。
それを見咎めた両親や妹に対しては示威行為を繰り返す。
国立大学医学部を卒業していようと、医師になるための能力、殊に忍耐力に欠ける彼は単なる中年無職であり、能力がなく努力もしなかった自身の落ち度を棚上げして社会を怨んで反社会的行為を繰り返す氷河期無職の一人に過ぎなかった。