(>>175の続き)

気に入らない店は作品にしないという。合格だろうか。
1カ月ほどして届いた作品には、
長いカウンターの中央で飲み物を作る村尾の姿が描かれていた。

「彼はコットンクラブが好きでした。奈良に行くねんと言ったら、あそこかなと」。
妻の素子(56)は話す。
一徹が4年前に亡くなり、素子は初めて店を訪れた。村尾に会いたかったから。

村尾と話したとたん、素子にはわかった。一徹はこの人柄にひかれたんだなと。
勢いよくしゃべりながら、ヒゲをたくわえた顔をくしゃくしゃにして笑う人なつっこさ。
「バーは人なり。バーテンダーの人柄が一番と彼はずっと言っていましたから」

  (続く)