>>170
10月20日(木)朝日新聞東京版夕刊5面・都ものがたり

成田一徹と奈良の「コットンクラブ」  「バーは人なり」切りとって

いらっしゃいませ。

声といっしょにマスターの笑顔が飛びこんでくる。
「コットンクラブ」はそんなバーである。

奈良市の近鉄新大宮駅から歩いて10分余り。

オーナーバーテンダーの村尾昌紀(48)にとって、
切り絵作家成田一徹との出会いは食雑誌「あまから手帖」だった。
大阪のバーで修業したころ、載っていた作品に目がくぎづけになった。

シャープな線が際立つ黒と白世界。
一徹は全国の名店と名バーテンダーのきりりとした姿を千点もの作品に残した。

村尾はコットンクラブで働きだし、知人のツテで切り絵を頼むことになった。
2000年の春先、一徹が初めて店を訪れた。
「緊張でよく覚えていないんですが、やさしいしゃべりかただった」

  (続く)