俺はたまにふと思うことがある。この世に生を受けて三〇の年月を経験したが、実にあっという間だった。人生、化天の世界に比べれば夢幻のごとしだ。
俺も、いつの日か、いつの間にか年をとってしまったな、なんて言ってぼんやり空を見上げることがあるのだろうか。人生とは何だろうか?
俺は金や女によって得られる喜びはもう味わい尽くした。でも、虚しい。もっと生きがいがほしい。命をかけて燃焼できる夢がほしい。
俺は生まれてくる時代を間違えたかもしれない。こんなぬるま湯のような飽食の時代よりも、明治維新のような激動の世に生まれたかった。楽しいだろうな。
命をかけて戦う者同士の友情、時代の先頭にいるような高揚感、情熱の時代を駆け抜けた志士の名につらなりたい。
それは虚栄心なんかではない。
心の底から、燃えるような充実感、生きているという実感を味わいたいのだ。
食って交尾して寝ての繰り返しなら、動物と一緒だ。俺は本当の人間になりたい。