(説明義務違反)
被告(被害者)は,委託証拠金280万円を預託した時点で,その翌日に追証の預託を求められ,1週間後には取引が終了して差損金の請求を受けるなどという事態を,想定してはいなかったと考えられる。
短期間で委託証拠金の額を超える差損金が生じるような危険性の高い商品先物取引について,被告(被害者)には,その危険性に対する認識が欠けていたということができるから,被告(被害者)が,自己の責任と判断に基づき,本件の先物取引をしたとは認められない。
被告(被害者)は,老後の蓄えを増やしたいと考えており,そのために地金を保有していた。
わずか1週間で差損金の請求を受けるほどの危険があること,しかも,先物取引でプラスになる顧客の割合は2,3割くらいといわれていること(旧フジチューの担当外務員もこれを認めている)
などについて,具体的に説明を受けていたとしたら,地金を売ってまで,先物取引をしようとは考えなかったはずである。

(差損金請求)
本件の先物取引は,原告(旧フジチュー)の従業員の不法行為によるものと認められるから,原告(旧フジチュー)が,この取引について発生した差損金の請求をすることは,信義則に反し許されないというべきである。