未来神話シリーズ2
今、ここ富士の樹海には真っ黒に焼け焦げ、朽ち果てたおびただしい数の十字架が立っている。
この日本で、中世の魔女狩りが再び起こるとは、一体誰が想像したであろうか。
おびただしい数の外務員、元外務員、さらにその血を分けた家族までが
ここ富士の樹海に連れてこられ、焼き殺されたのだ。
炎は、被害者の憎しみのすさまじさを象徴するかのように、あっという間に外務員とその家族の全身を
包んで燃え上がり、のたうつ外務員のその耳を突くすざまじい悲鳴とこの世にこれほどの苦しみがあろうかというほど、カッと目を見開いたすざまじい形相が私の目に焼き付いて離れない。
発端は、2007年、父兄参観の時、ある外務員が不用意にも、外務員という職業名を洩らした
ことに始まった。そして、数日後、その子は、外務員の子供、詐欺師の子供、泥棒の子供、糞蝿の子供
人殺しの子供と虐め抜かれて、そして最後には、便所で首をくくって自殺した。
同じクラスの中に被害者の子供がいたのだ。
それから、その事件は、小学校や中学で、枯れ野を走る野火のように全国に広がった。
あちらの学校でもこちらの学校でも、外務員の子供が、泥棒、人殺しと虐め抜かれて自殺する
事件が相次いだ。そして、次は大人の世界でも外務員の家には次々に放火され、
「あいつは外務員だ!」と誰かが叫ぶや否や、ほとんど瞬間的に人々は、手に棍棒や石を持って
襲いかかり、その外務員と名ざしされた男に襲いかかった。
更に妻子まで、皆憎しみに突き動かされたようにほとんど反射的に襲いかかっていった。
ここに至って警察は、何もしなかった。過去おびただしい数の殺人、暴行事件の
原因は、外務員の横暴にあることを知っていたから、ただ、傍観するのみであった。
そして、「外務員」と疑われた者は、すべてここ富士の樹海に連れてこられ、十字架に掛けられ
焼き殺されたのだ。
今、その朽ち果てた黒焦げの十字架の上に今、おびただしい数の蛍が群れ飛んでいる。
それは、外務員にすべてを奪われたおびただしい被害者の亡霊のようにも見えた、
被害者の霊は外務員の腐りきったどす黒い魂を地獄へと道案内しているのだろう。
私にはそう思えた。
ーーーー20XX年の物語ーーーーーー