一年以上入院してたので、同室になった末期の人の中には医師に対する恨み言を口にする人も多かったよ

「半年前の検査で何も異常がなかったのに、こんなことになってしまって、あの時見落としてたに違いない」
「検査のあと、診察に来いとも連絡をくれずにほっときやがって、それで手遅れになった。あいつ殺してやる」
「かかりつけ医は痛み止めの注射ばかりで、いくら注射しても痛みが治まらないと言っても、大げさに痛がるなと取り付く島もなかった」
「手術で腹を開いたら播種してたからそのまま閉じやがって。あれでがんが広がった」
「治るといったから手術をしたのに苦しいだけじゃないか。もとに戻してくれ」

自分も一度目のがんのとき、最初に受診した知り合いの町医者がいい加減な診察と診断したせいで治療開始が遅れるうちに病期が進んでしまって訴訟を考えたわ
でも、5年生存率が10%ていどなので自分が死んだ後に、無念や恨みを妻に引き継がせるのは耐えられないから口にしなかったよ

結局、自分は生き残る10%のほうに入ったわけだけど、その町医者のほうはというと一昨年の暮れに急死してしまった。
それを妻に告げると「あなたより先に死んだねw」と笑っていた。
こいつもおくびにも出さなかったけど恨みにおもっていたのだなあと