まぁ、臨床データが一目瞭然とならないのは交絡因子が多いからだが、中でも最大の要因は繰り返し言ってきた「インスリンのリスクは発癌ではなく癌腫の成長促進」という点だろう。
これについては研究者(特に臨床)ですら切り分けが十分に出来ているとは言い難いので無理もないが、結果の数字だけ見て交絡因子に気が回らないプゥ君みたいな馬鹿丸出しも如何
なものかと思うぜ。

このスレの元々のテーマである膵癌で言えば、患者には高率にp53やsmad4等の遺伝子異常が認められているので、こうした因子が発癌に強く関係しているであろう事は容易に想像出来る。
つまり発癌自体はインスリン以外の要因・確率でトリガーが引かれるので、幾らインスリン投与群と非投与群に分けてRTCをやっても、多くの研究がカウントする事象の「発生率」
というパラメータに固執する限り群間に明確な差は現れない(実際には感知し得るサイズにまで癌腫が成長する期間が短縮されるので、インスリン投与群の方がぼんやりと見かけ上の
罹患率が高まる様なデータになる場合もあると思われる)。従って、癌の成長速度や悪性化を評価出来るパラメータを導入しない限り、臨床的な証明は難しいだろうが、だからと言って
インスリンのリスクが無くなる訳じゃない。リスクを前提とせずに安易に大量投与に走る事は厳に慎まなければならない。大学病院レベルの医者でインスリンと癌の関係性が気に
ならない者は流石にいないだろうが、地方の金儲け第一の様な開業医には、新規の糖尿病発症例に対しても膵管が癌で狭窄して発症した可能性を考慮せずUSでの診断も試みる事なく
形ばかりの食事指導を経てインスリンを無反省に処方し続ける不届き者がいまだにいる。最低でも、インスリンは定期的な癌検診はワンセットで考えられるべき薬剤である、そういう
認識が必要だろう。

また、内因性インスリン産生の場である膵臓に出来る癌が、他の部位に比べ異常に進行が早く、また術後再発率の異常に高いという事実から逃れる事は出来ない。内因性インスリンの
血中濃度が高いほど癌のリスクが高まる事も分かっている。生理的状態ではインスリンは膵臓から肝臓を経て全身に拡散していく訳だが、外因的に投与されるインスリンは末梢側の
血中濃度が最も高いという極めて不自然な状態を作り出す事になる。これが全身状態を擾乱しないと考える方がどうかしてる。