今から20年くらい前の話。
俺はこの会社に名前が気にいって設計で入社した。
新卒だったから当然世間知らず。
だけど、良心がとがめて半年で退職した。
その頃は木造のワンルームが中心で、当時でも破格の坪単価だった。
手抜き?木造だからそんなことは知れている。

驚いたのは、建てている場所だ。
昔ながらの閑静な住宅街を一区画だけ購入したあと、
敷地ギリギリの建築面積で、総二階のワンルームを建てていた。
都会の金持ちに不動産投資を勧めて、地方にワンルームAPを建てさせていたわけだ。
入居者は、主に学生。閑静な住宅地に自転車やバイクの駐車場所もない状態だった。

回りの住人は、まず敷地いっぱいの布基礎に驚き、
そこが学生アパートになる事でさらに驚き、
町内をあげて、建築差し止めの申し立てが始まった。
そこで説明会。回答は、建築関係者が6・7名で、形式的には謝っているものの、
口からは「正式に許可は下りていますし、不正な建築ではありません。」と繰り返すばかり。

そんな場に何度も立ち会わされた。
一般的に何十棟も建てていれば、たまにはそんなこともあるだろうが、
ほとんどすべての現場でそうだった。
良心の呵責に耐えかねて、会社を辞めた。

このスレを見かけたお陰で、ここに勤めていたことを思い出した。
あれから20年以上も経つのに、近隣に波風を立てる経営方針は変わりもせず、
そして、同じ心境で辞めていく社員が今もいることに驚いた。
だが、辞めた人たちは、自分の気持ちに向き合った、まだ心ある人達かも知れないな。