俺は小島君と同じ県内の高校の柔道部だった。
俺が初めて出場した県予選の会場で「栃木高校にすごく強い一年生がいる!」という噂が流れていた。
それが小島君だった。
会場のスピーカーから
「次は第1試合場で三回戦を行います。栃木高校小島一志選手・・・」
とアナウンスが流れてると客席の見学人たちが「ワーッ!」と大歓声を上げて
第一試合場を囲む客席に押し寄せた!
もちろん俺も見に行った。
噂の小島選手とはどれほど強いのか・・・
ゴクリとツバを飲み込んで見守る人々。
そして始まった試合!
なんと小島君は開始早々山嵐で反則負け!
小島君はたしかに強かった。
だがその強さが試合という枠組みの中では通用しない強さだった。
客席にいた講道館の関係者がポツリと呟いた。
「ありゃあ喧嘩屋だな」
その日から小島君は「山嵐の小島」と呼ばれ地元の不良に恐れられるようになった。