(五)
動作と呼吸を一致させる

(承前)
最後に挙げられるのが、動作と呼吸の一致である。
先に動作についてのみ言うならば、前屈立ちなら前屈立ち、騎馬立ちなら騎馬立ち、そして後屈立ちなら後屈立ちにと、要求されるスタンスに一挙動でぴたりと収めなければならない。
踏み込みと突きの完全な一致、体重移動の完了と腰の決めの完全な一致がここで要求されている。
加えてさらに重要なのが、これらの動作と呼吸の一致である。
体重移動の途中で吸い、踏み込みに合わせて突きが決まった瞬間、フンッと吐く。
吐いた時に息はドーンと丹田にまで落ちる。
先に述べたように姿勢が正しければ、この圧力は腹、背中とともに感じられるはずだ。
この丹田に落ちる力、それこそがパワーの源である。
この瞬間、ぎゅっと握った力から、無駄な力みが消える。
握っていながら力まない状態ができるのだ。
破壊力を出すコツとは、誰でも知っているようにスピードと力である。
だが、スピードを出すために力んではいけないし、力を出すためには筋肉をぎゅっと締めなくてはいけない。
そう、明らかに矛盾している。
この矛盾を統合するのが、ここで学ぼうとしている呼吸の力なのだ。
一挙動で行う技では吐く時に腹が脹れる逆腹式呼吸、連続的に繰り出される技ならば吐く時に腹がへこむ正腹式呼吸を使う。
いずれにしても動作、体重移動、緊張と脱力、そのものすべてに呼吸がついていかなければならない。
移動稽古の段階では、意識的に呼吸をコントロールすることで、動作と一致させる。
言い換えれば強制的に動作と呼吸を合わせることで、両者の統合を図っているのである。
こうした稽古で自分の意識と体を練りあげていけば、いずれ動作に呼吸が自然についていくようになる。
そして、何も考えなくても、どんな動きの中でも腹式呼吸ができるようになった時、稽古の目的は達せられたといえるわけである。
(つづく)