竹輪じゃあるまいし、左様に簡単に、人間を輪切りにされちゃ堪らぬが、其の際物理学の力の
重心に就いて、一席講釈し、刀の柄に重心を、置く話を試みた處、さすが剣道は自慢の男だ。
フト其の雑談中輪切りの極意の閃きを、会得したものと見え、今まで柔和であった其の面貌が、
急に殺気を含んできたさうな。  
 大菩薩峠の机龍之介をインタビューしたら、或は其のコツが解かるかも知れんが、剣道をよく
する者が、人を斬りたいなどと云ふショックを受けるや、其の刹那必ず、サッと一陣の殺気が、
五体から迸るものださうな。思へば江連の奴、やはり海賊の名を売っただけのことはある。。