先入観や神秘主義を排した富樫さんの実験と技術体系の構築には頭が下がるが、弟子を相手にするとどうしても弟子の側からの「片八百長」(意識的、無意識的を問わず)になってしまう。「達人は保護されている」というやつだ。

米国で1993年の秋にUFCが初めて開催されたとき、1950年生まれの富樫さんは43歳だった。
初回はルールやコスチュームの制約もきわめて少なく、素手による顔面攻撃はおろか、倒れた相手への踏みつけや脊椎への攻撃まで許されていた。
富樫さんは年齢的にその気になれば乗り込んで思う存分闘うこともできたはずだが、それをしなかったのは残念だった。