ウォール・ストリートジャーナルが冷静な意見を紹介
https://jp.wsj.com/articles/SB1113372239404773342690458457720414610208
改善の余地

 ある意味、ProはノートPCよりも優れている。スタイラス(ペン)が使え、セルラーモデルであれば携帯電話回線に接続でき、モバイルゲームもプレーできる。
デモでは、アドビの幹部が近く発売予定の「Photoshop(フォトショップ)」アプリを披露した。
デスクトップアプリ並みの機能を備えながら、さらに使いやすく、読み込みが高速化している。

 唯一足を引っ張っているのがiOSだ。アップルはiPadのマルチタスク機能を長年かけて改良しているが、アプリ間の切り替えやデータ共有はいまだにうまくできない。
iPadの「ファイル」アプリはMacの「Finder(ファインダー)」のような有用さからはほど遠い。

・Lightning(ライトニング)端子に代わってUSB-C端子が装備されているが、対応していない周辺機器が多い
 USB-Cにも欠点がある。カメラを接続し、写真を転送できるが、転送できるのはiPadの「写真」アプリだけだ。
アドビの写真編集ソフト「Lightroom(ライトルーム)」など、写真好きの人たちが使いたがるような他のアプリには転送できない。
またUSBメモリーにも対応していない。モニターは接続できるが、Proの画面と全く同じものが映し出せるだけで、アプリの表示サイズを拡大することはできない。
コントローラーやプリンターも接続できない(ただし、iPhoneを接続して充電することは可能で、筆者のiPhoneで試したところ、電池残量が34%の状態から100%充電するのにProのバッテリーはわずか5分の1しか消費しなかった)。

 iPadのいろいろな制約の中で最もいら立ったのがブラウザーだ。
12.9インチのディスプレーを使用したときでさえも、「Safari(サファリ)」ブラウザーではモバイル向けのウェブサイトが表示され、その多くでアプリを使用して開くよう促された。
グーグルをはじめ多くのアプリ開発会社がいまだにiPadを大きなスマホのように扱っているため、これは好ましくない。
ProはノートPCサイズのデバイスであり、ノートPC並みのブラウザーが必要だ。この点は「Chromebook(クロームブック)」の方がはるかによくできている。
クロームブックでは、本格的なクロームブラウザーに近いアンドロイドアプリが提供されている。いずれにしろ、ほとんどの人はこれで十分だ。

 こうした制約は全てソフトウエアに起因する。アップルはiOSに多少手を加えることでiPad Proをはるかに便利なマシンに変貌させることができる。
それは来年の6月に実現される可能性もある。
アップルは例年、この時期にソフトウエアの大幅なアップデートを発表するからだ。だが筆者はそれを当てにしていない。
なぜなら、アップルはiOSプラットフォームをMacやウィンドウズOSのようにオープンにすることには常に慎重だからだ。

 となると、われわれが手にしているのは、今のところ史上最高のiPadということになる。
特に筆者は12.9インチモデルが気に入っている。画面の大きさは変わらないが、以前ほど重くない。
しかし、iPad Proでできることは依然、基本価格わずか329ドルの最新の標準iPadと大して変わらない。
iPadアプリ開発業者が特に狙いとするクリエーティブな仕事に携わる人でない限り、
あるいはアップルのソフトウエアに対する考え方が変わるまでは、iPad Proを買う理由が見当たらない。