「ゴールデンタイムのアニメゼロ」という大きな決断

 18年10月、テレビ東京はアニメの編成で大きな決断をした。木曜夜6時55分から放送していた「ポケモン」を日曜夜6時に移し、ゴールデンタイム(夜7?10時)のアニメをゼロにしたのだった。

 「学習塾などで忙しい子どもが視聴するには、平日よりも土、日曜の方が見やすい」という判断だった。半世紀以上にわたりなかった編成となった。

 ポケモンの情報番組として02年に始まった「週刊ポケモン放送局」は、番組名や時間帯を変えながら継続、いまも「ポケモンの家あつまる?」として放送されている。

 ポケモンを担当するアニメ局アニメ制作部の細谷伸之(47)は「ポケモンはゲームでキャラクターを交換する元祖となった。ふつうのアニメは週1回だけだが、ポケモンはゲームなどを通じ何度も接する機会があるのが強み」と話す。

視聴率至上主義から脱却したアニメ新戦略

 18年7月に公開された21作目のポケモン映画「みんなの物語」は興行収入が30億円を超えている。

 放送から20周年を迎えた17年の映画「キミにきめた!」からは、子どものときにポケモンで遊んだ親世代を意識し、97年のテレビ放送第1話をベースにし、サトシとピカチュウがなつかしいポケモンと次々に会うストーリーになった。

 「ポケモン」の担当が長かったアニメ制作部の松山進(46)は「ゲームと連動させる企画で映画の興行収入を回復させるなど、アニメ以外での取り組みも息長い人気につながっている」と話す。

 ゲームやおもちゃを最も購入するのは6〜12歳という。ポケモンの商品製造や宣伝などを手がけるため98年に任天堂などが出資して設立された株式会社ポケモンによると、ポケモンに関する全世界の売上高は累計6兆円以上になるという。このうち国内は35%、海外が65%に達する。

 アニメの「ポケモン」は9月末で1042回の放送を迎え、テレビ東京では最も長寿のアニメ番組となっている。

 ただ、視聴率は02年に2桁を割り、18年9月時点では3%台になっていた。

 とはいえ、川崎は「アニメの世帯視聴率と2次利用の収益は必ずしも一致しない」と言っている。視聴率至上主義から離れたからこそ、テレビ東京のアニメ戦略は花開いたといえる。(敬称略)