テンセント、NFLを独占配信へ 狙うはスマホ視聴者
ゴールデンタイムの全試合を含め年間100試合以上
By Wayne Ma and Alyssa Abkowitz
2017 年 8 月 23 日 14:27 JST

 【北京】アメフトは米国では圧倒的に大画面テレビで視聴されているかもしれないが、
米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)が中国で視聴者の取り込みを狙っている
舞台はスマートフォンの小さな画面だ。

 NFLと中国のインターネットサービス大手、 騰訊控股(テンセントホールディングス)
は今週、NFLの試合のネットでの独占配信権をテンセントに供与する3年契約を結んだと
発表した。金銭的な条件は明らかにしていない。

 テンセントは試合の生中継やその他NFLのコンテンツをモバイル端末と
デスクトップ向けのプラットフォームで無償ストリーミング(逐次配信)する計画だ。
それには月間アクティブユーザー(MAU)が9億6000万人を超える
主力のソーシャル・メディア・アプリ「微信(ウィーチャット)」も含まれる。

 NFLの中国事業の責任者リチャード・ヤング氏によると、米中の時差の関係などから、
中国では試合はおおむねモバイルプラットフォームで視聴されることが見込まれるという。

 ヤング氏は「われわれの試合は月、火、金の朝に放映されていたため、
視聴者がテレビから離れた場所にいることが多かった」とし、
「今後は自宅で出掛ける支度をしている間や通勤途中に視聴できるようになる。
一時停止をし、出勤してから視聴し続けることも可能だ」と述べた。

 契約に基づきテンセントは木、日、月の全ナイトゲームのほか、
スーパーボウル(優勝決定戦)などの厳選した試合のストリーミング料をNFLに支払う。
中国の視聴者は中国人解説者のコメントをライブで聴けるほか、
テンセントのニュース配信プラットフォームでNFLの記事も読める。

 NFLの最大の課題の1つは、中国で最も人気の観戦スポーツである
バスケットボールのような形で、試合や選手の人気を高めることだ。

 中国では米プロバスケットボール協会(NBA)のヒューストン・ロケッツで活躍した
姚明(ヤオ・ミン)がNBAの人気向上に一役買った。レブロン・ジェームズや
コービー・ブライアントなどNBAの現役・引退双方の選手に大勢のファンがいる。

 中国でのNFLの展望について、一部アナリストや業界関係者は強気の見方を示している。
上海に拠点を置くスポーツとデジタルマーケティングのエージェンシー、メールマンの
アンドリュー・コリンズ氏は「NFLと共に提供されるNFLの文化、ファン、テールゲーティング
(観戦前に試合会場の駐車場で開かれるパーティー)、ドラマは魅力的だ」とし、
「単なるスポーツではなく、エンターテインメントだ」と話す。

 テンセントにとって今回の契約は、広告枠売り込みに向け数億人のユーザーを
サイトにとどまらせるための全般的な戦略の一環。テンセントは2015年にも少なくとも
5億ドルを支払い、NBAの試合を中国で独占配信する5年契約を交わしている。

 NFLにとっては、米国で向かい風に直面している中での契約となる。
テレビ視聴率調査会社ニールセンによると、
NFLの昨季の1試合の平均テレビ視聴者数は1650万人と前季から8%減少している。

 その原因は市場が過飽和状態にあることに加え、
テレビからネットへの視聴者の移行が進んでいることがあるとアナリストはみている。

 テンセントの契約視聴者は、NFLのゴールデンタイムの全試合を含め年間100試合以上を
ライブまたはオンデマンドで見ることができる。これに対し、アマゾン・ドット・コムが
NFLとストリーミング契約を交わしているのは今季のゴールデンタイムの10試合のみだ。

http://jp.wsj.com/articles/SB10050937725972523727304583347153157619368