グノーシス主義では、『旧約聖書』に登場するヤハウェと名乗っているデミウルゴスを、
固有名で「ヤルダバオート」と呼んでいた。
『旧約聖書』において愚劣な行為を行い、
悪しき行いや傲慢を誇示しているのは、
「偽の神」「下級神」たるヤルダバオートであるとした。

ヤルダバオートはデミウルゴスであり、
また「第一のアルコーン」である。
愚劣な下級神はアルコーンと呼ばれるが、
ヤルダバオート以外にも多数存在し、それはデミウルゴスが生み出した者で、
地上の支配者である。
アルコーンはしかし、愚かで傲慢な下級の神であるが、
人間にとっては恐るべき存在でもある。

デミウルゴスや諸アルコーンが愚劣な「下級の神」というのは、
あくまで完全なるアイオーンやプレーローマ(英語版)の至高者に比較しての話である。
人間の悲惨さの原因である「肉体」や「心魂」はデミウルゴスの創造したものなれば、
人間はこれらの部分ではアルコーンの支配下にある。

人間がデミウルゴスや諸アルコーンに優越するのは、
ただその内部にある「霊」においてのみである。
そしてこの内なる「霊」こそは「救済」の根拠である。

グノーシス主義の神話では、デミウルゴスが水に映った「至高なる者」
(ソピアーの像またはアイオーンの像)を
自己の映像と錯覚して人間を創造するということになっている。