嫁とはバイト先が同じで、同級生だからかいつのまにか仲良くなって、うちで親父のこと見ててもらうこともあった
もちろん過去の色ボケ前科があるから、母ちゃんが家事してる間見ててもらったり、買い物の時に急に走り出すから一緒に来てもらったり親父と二人っきりにならないようには配慮してた
ヘルパーとかケアマネとか知らない人が家にくると不安定になる親父だが、嫁が来るとまあ喜んで穏やかな顔でちっちゃい子に昔話聞かせてるように話し出す
何回も何回も繰り返される話なのに、何度も何度も初めて聞いたようなリアクションを返す嫁
嫁との記憶は親父とセットのばっかりで、初キスも初セックスもデートもいつどこでだったのか
どっちがプロポーズして結婚になったのか、もしかしたら嫁推しの婆ちゃんに促されてそうなった可能性もある
この頃は、俺の人生で一番暗くて消耗していた時期だったんだ
もしかしたら、思い出したくないから長年かけて封印してしまったのかもしれない
写真もほとんど残ってない
その後の記憶は結婚式
つっても親父のこともあるから身内だけのささやかな食事会だけど、今考えたらあんな適当な結婚式で嫁は良かったのかな?
結婚指輪もやってなくて、嫁は自分で買った安い指輪をずっと薬指につけてる
そっから15年、親父は介護度が上がって今は施設にいるよ
子供も大きくなって生活に余裕出たけど、相変わらず嫁は贅沢しない
嫁は俺のどこを好きになったんだろうな
今さらで恥ずかしいけど昔のこと聞いてみようかな
長々とすまん