第1回 「聞こえないのに聞こえる」不思議な音で病をなおす
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140129/381792/
より。

父とぼくとの間でちょっとした論争があったのは80年代のこと。
音楽CDが普及し始めた折、父は「CDの音がおかしい」と主張した。

22.05キロヘルツ以上の高音をカットする規格そのものの問題かも知れない
とオーディオ雑誌で論陣を張る評論家もいて、父もそれに与していた。

一方、ぼくには違いがよく分からなかった。
どのみち、20キロヘルツ以上の高音は、人間の耳では聴き取れない。

父がオーディオシステムの調整用に持っていた特殊な音源でも、
ぼくが聴き取れるのはせいぜい16キロヘルツくらいまでだった。

高い周波数の音は年齢とともに聞こえづらくなるそうで、
当時50代だった父は10キロヘルツを超えるともう無理だった。

それなのにCDの規格うんぬんなどというのは笑止!
とぼくは思っていたフシがある。

ところが、実は父の方が正しかったのかもしれない、
という研究に出会った。

人間の「耳」では20キロヘルツ以上の高周波音は聞こえないものの、
にもかかわらず実は聞こえている! というのである。

それどころか、高周波音を含む音の刺戟に脳が応答し、
例えば快さに直結する反応を示す、とも。