難波による田中雄二電子音楽本批評抜粋その1

さて、本章以降、21章、25章で繰り広げられる、“シンセサイザーを使ったポピュラー音楽シーンでのビートルズ的存在”とまで、著者の多大な思い入れを傾けるYMOについての記述であるが、
ついにメンバーへの新たなインタビューは登場せず、過去の雑誌や書籍等に登場したメンバーの発言の引用でのみ構成される。
 インタビューでの発言が正確に記載されることは少ないということを、いやしくもマスコミに関わる者ならば理解していなければなるまい。
 直接YMOの3人に新たなインタビューを取らなかったことについて、“散開(解 散)以降、YMOの伝説がファンの間で熟成され、それにこたえるかのように伝説めかしたトーンでメンバーがYMOについて語ってきたのを、何度か見てきたから”、
“黒沢明の研究本として知られる『巨人と少年』を参考に、当人のインタビューをとらない伝記のスタイルを採用した ”と記している。
 メンバーが伝説めかして語る以前の記事を引用して、“どこまで事実が検証できているかに不安が残るものの、ありうる仮説なども取り混ぜて、
少しはこれまでのYMO研究本より踏み込めればと思う”のは著者の自由だが、それでは東スポの記事と一緒である。