『エレベーター・ミュージック・イン・ジャパン』のインタビューは、他にも杜撰な部分、
作者がロクに取材していないと容易に推測しうる部分が多々見られます。
まず、作者は「テープレコーダーはナチの発明」(これは電子音楽 イン ジャパンの時から)」
と、あくまでナチスが独自開発したかのように言いますが、テープレコーダーの発想は古く、
1898年のデンマークのヴォルデマール・ポールセンによるワイヤーレコーダーに端を発し、
そして針金ではなくテープを採用したのはドイツのフリッツ・フロイメルですが、これは1928年でナチスと関係ありません。
そしてテープレコーダーの音質を飛躍的に向上させた「交流バイアス法」は同時期に複数の人が
そのメリットを「発見」してますが、時系列的に一番最初なのは日本の永井健三(1938年)で、
確かにナチスの支配下にあった当時のBASF社が実用的なテープ録音技術を開発していますが、
当然のように、日本も大戦中にはワイヤーレコーダーで実用的な音質を確保していた訳で
(ちなみにワイヤーレコーダーは初期大藪春彦の小説「蘇る金狼」にも多々出てきますね)
様々な技術者が長い時間を掛けて開発して技術を強引に「ナチス・ドイツ」に結びつけるのは
「田中雄二は意図的に事実を捻じ曲げている」と非難のそしりを受けても仕方ありません。