文化庁より令和2-3年度の文化交流使を拝命しました.日本の文化の発信,交流に努めていきたいと考えています.スピーチでは下記のようなお話をしました.

まずは栄えある文化交流使に選んでくださったこと,関係者の皆様並びに日々ご協力いただいている方に感謝を申し上げます,ありがとうございます.
自分はトランスフォーメーション,物化,変換,東洋的な風景美や哲学,そういったものを作品のテーマにしてモノを作ってきました.例えばメディア装置に記録されることや空間に直接描画すること,メディア装置を通じて映像や物質の間の変換がされること,そしてその間に残る情念や質量性への憧憬などは興味の一つです.
自分は作家としてそして研究者としてよく海外に行ったり,個展を行ったりしているのですが,今は海外に行っていない最長期間を更新中です.しばらく国外に出ていません.これからポストコロナとしてメディアアートをどうやって考えていくかということも含めやっていきたいと思います.
自分はメディアアートというジャンルを説明するとき,なんらかの技術的背景や技術環境に置かれたメディア装置を画材や素材として扱われる作品,として説明します.作家が油絵具を調合したり,岩絵具を塗ったり,木材を入手したりするように,メディア芸術の作家は,ポスト工業社会の風景の中からメディア装置を発明・発見・採取し,それを用いて作品を作ってきました.
ジャンルとしてのメディアアートにはその誕生の頃から,世界的に見ても日本の電化製品や電子部品が使われることが多かったように感じます.それはある種の土着性とも言え,工業的発展を行った戦後の日本の中からブラウン管だったりセンサーだったり電化製品だったりするものが発明・量産されていくこととともに歩んできたものかもしれません.
ソフトウェアのプラットフォームはアメリカに移っていきましたが,ハードの中心地は未だアジア地域であり,アジアにはメディアアートの若手の萌芽が多く見られます.これはスマートフォンだったり電子部品だったり,土着の入手性がある素材としてのメディア装置の広がりも一因の一つであると考えられます.アジア地域を俯瞰したときに見えるメディアアートというジャンル,アジア文化,その文脈を意識して考えていきたいとも思っています.
ポストコロナにおいて,実体験を伴うメディアアートは危機に瀕しています.映像を用いるビデオインスタレーションと異なり,接触や密集によって体験をより高めてきたメディアアートはそのオンライン化が難しくなっています.そう言った観点からも,新しい手法を提案できるよう,文化発信・交流と合わせて考えていきたいと思います.皆様のお力添えをよろしくお願いいたします.

皆様何卒宜しくお願いいたします!