金融庁、リスクの芽に先手、全主要行に通年検査、業態横断チームも新設。
2021/08/18 日本経済新聞 朝刊

 金融庁が金融機関への検査体制を強化する。機動的に経営実態を把握できる通年検査の対象に新生銀行とあおぞら銀行を追加
するほか、融資の焦げ付きや市場運用での損失リスクに目配りする業態横断のチームも新設した。監視の網の目を細かくし、新型コ
ロナウイルス禍や低金利環境の長期化に伴うリスクの芽に先手を打てるようにする。
 通年検査は事前に特定の検査項目を決めず、幹部らと対話するなかで課題をあぶり出す手法だ。金融機関と当局の意思疎通を密
にし、急な社会情勢の変化などに迅速に対応しやすくする狙いがあり、2013年に3メガバンクを対象に始まった。
 検査官が一定期間、本支店に立ち入って提出された資料を確認したり、担当者や幹部をヒアリングしたりするそれまでの検査と違い
、文字通り年中、取締役会や経営会議の議事録、融資審査の書類などあらゆる経営資料を常時チェックするのが最大の特徴だ。
 期間を隔てる立ち入り検査では結果の通知書をその都度、交付するが、通年検査では銀行との継続的な議論を重視する。
 米国では大手銀行に対して、通貨監督庁(OCC)から専属の監督官が各行内に常駐し、実際に取締役会に参加したり、経営陣らと
通年検査は米国の常駐検査と似た効果を狙っている。
 金融庁は18年に三井住友トラスト・ホールディングス(HD)、りそなHD、ゆうちょ銀行、農林中央金庫を通年検査の対象に追加し、
新たに21事務年度(21年7月〜22年6月)から新生、あおぞら両行を加えた。これで主要行すべてが通年検査の対象になる。