変革に挑む2019(1)メガ銀、IT企業とどう付き合う?―みずほFG坂井辰史社長、銀行の知見伝え手助け。
2019/01/08 日本経済新聞 朝刊

 ――対話アプリ大手のLINEと2020年の銀行開業で連携します。
 「我々が銀行業のプラットフォーマー(基盤提供者)になるという観点で、このビジネスを進める。LINEが自社の顧客向けに銀行業務
をすることに対し、我々がノウハウを提供する。みずほの自社の顧客向けサービスとは戦略上の位置づけが異なる。黒子役、あるいは
運転席ではなく助手席に座る」
 ――ノウハウの売り渡しにはなりませんか。
 「バーチャルの世界での銀行が現実の世界に出る場合や(主要顧客とする)若年層が総合的なサービスを必要とする場合は我々に
任せてもらえる想定だ」
 「今回は具体的な収益化の絵を描いていないが、データビジネスは潜在性がある。LINE経済圏の話だが、顧客の行動を起点に考え
ると期待は大きい。一方で(ソフトバンクと共同出資する消費者ローンの)Jスコアはみずほのサービスという位置づけだ。顧客が銀行デ
ータとの連動に合意すれば、金利メリットを受けられる」
 ――データの主導権をLINEが握る懸念はありませんか。
 「そうは思わない。データビジネスの収益の源泉はBtoC(消費者向けビジネス)のB(企業)から出る。ここは我々が非常に強く、ウィ
ンウィンの関係を築ける」
 ――三井住友銀行と三菱UFJ銀行がATMの相互開放に乗り出します。
 「ATMは、顧客が銀行を選ぶ際の最大の項目の一つだ。我々はコンビニATMとの関係で見たら弱いが、フィンテック業種との比較で
は圧倒的に強い。ただ(Jコイン構想など)デジタル通貨の浸透に伴いATMの必要性は落ちていく。ATMは共通化ありきではなく、顧客
の利用動向に対する強み、弱みを見て判断していく」
 ――銀行、信託、証券以外のグループ戦略をどう進めていきますか。
 「クレジットカードの分野は、他メガグループに比べて会員数で差をつけられている。一方、デジタル通貨でなければ捉えられない領域
もあり、長期的に(カードの)あり方も変わる。いま劣勢だから強化するという発想ではなく、柔軟に経営資源を投下する」