http://www.computerworld.jp/topics/614/204511/

 米国AppleのモバイルOS「iOS」はセキュリティが非常に堅牢であるが故に、警察当局の犯罪捜査で問題が生じているという。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)のTechnology Reviewによると、米司法省では容疑者から押収したiPhoneあるいはiPadの
検査に手を焼いているという。暗号化技術の利用拡大がその主因であるもよう。

 「司法省の立場から言えば、ドライブが暗号化されていたらそれまでだ」と司法省のサイバー犯罪研究所担当ディレクターで
あるオヴィエ・キャロル(Ovie Caroll)氏は2012 Digital Forensics Research Conferenceの基調講演で述べた。「犯罪捜査を行
う際に、ディスク全体が暗号化されていたら、そのデータを復元することは不可能だ」

 MITによると、Appleのセキュリティ・アーキテクチャは、消費者による暗号化が容易な一方で、他者による暗号化データの盗
難は困難な仕組みだという。Appleは「AES-256」を利用してデータを暗号化している。これは、米国家安全保障局(NSA)が極
秘情報を暗号化するのに使っているのと同じアルゴリズムである。

 また、iOS端末に使われるPINコードの解読も困難だ。捜査官は可能性のあるPINの組み合わせを総当たりで試さなければな
らない。それに、不正なPINが何度も入力されることでiPhoneが自機データを消去しないように特別なソフトウェアを使用する。
MITによると、PINの解読には6けたで最大22時間、9けたで2年半、10けたで25年間かかるという。「大部分の企業機密を保護す
るには十分だ。そして、大部分の犯罪者にとっても十分だろう」とTechnology Reviewは述べている。

 「iOS端末からデータを抽出するには多くの問題が存在する」とスマートフォン向けの犯罪科学用ソフトウェア、ハードウェア、
サービスを提供する米国Parabenの最高経営責任者(CEO)、アンバー・シュレーダー(Amber Schroader)氏はMITに述べる。
「暗号化に行く手を阻まれ、情報開示に向けて手続きを進めることのできなかった民事訴訟が数多くある」