幕政の当時親しく見聞したる事実に拠より、我国開国の次第より幕末外交の始末を記述
して別に一編と為なし、自伝の後に付するの計画にして、既すでにその腹案も成りたり
しに、昨年九月中、遽にわかに大患に罹かかりてその事を果すを得ず。誠に遺憾なれど
も、今後先生の病いよ/\全癒の上は、兼ての腹案を筆記せしめて世に公おおやけに
し、以て今日の遺憾を償うことあるべし。

明治三十二年六月
時事新報社 石河幹明いしかわみきあき 記