つまるところ「島国根性」「日本人気質」とは、伝統的に日本人や日本社会が有していたものではなく、戦時体制下の気質が高度成長を経て、日本人が護持し、なまじその強烈な同調体制がこれといった弊害を生むことなく、結果経済大国となった過去五十年余の成功体験からきているのである。こういった日本人気質は、日本の歴史の中で日本人が持ちえなかった、悪い意味で全く新しい民族性なのである。

しかしもはや、日本社会は1940年体制とは全く違っている。非正規雇用が全労働者の約4割に至り、企業社会の根幹をなす終身雇用と年功序列は形骸化が叫ばれて久しい。産業界には旧財閥の垣根を超えた新しい企業体が勃興している。にもかかわらず、人々の意識だけが戦時統制下の影響を強烈に受け続けているのは、ひとえに敗戦後の民主的改革が不徹底で、中途半端で封建的な意識が人々にびまんしているせいであり、そういった意識の中でも日本社会が何とか回ってきたからに尽きるのではないか。

今次コロナ禍で浮き彫りになった日本人気質は、日本の歴史の中で「異形」のものであるとの認識を共有し、すでに終わった1940年体制に代わる、真の民主的な自意識を涵養かんようすることが急務だが、その道のりは険しい。