原作版・日本版での「禍蛇」

作中に登場する「禍蛇」と呼ばれる大蛇は、世の中の“執念”や”欲”を糧に大きく成長するとされています。

原作「陰陽師」では『白比丘尼』という章で登場します。300年前に人魚の肉を食べた白比丘尼は、不老不死となり人と関わる中で生じる、執念や欲が体の中で蛇となり、30年に一度は蛇を祓わないと、本人が“鬼”と化してしまうという話しでした。

日本版の映画『陰陽師』では禍蛇は登場しません。宮中を守る者として、人魚の肉を食べさせられた巫女が登場します。そして、政略のため妖術をかけられた姫が、嫉妬や欲で鬼になってしまうという設定です。

“とこしえの夢”では女帝として都を守る立場になった芳月が登場します。中国神話に登場する人類を創造した女神、“女?(じょか)”の話しとも似ています。

本作に登場する“祭天大典”とは蛇を祓う儀式で、芳月は長年祓われ生きてきたのでしょう。しかし、愛した者に禍蛇を抱える器と知られ、離れ離れになってしまう悲恋でもありました。