「竜田姫たむくる神のあればこそ秋の木の葉の幣(ぬさ)と散るらめ」
「秋の山紅葉を幣とたむくればすむ我さへぞ旅ごこちする」
「神なびの山をすぎ行く秋なれば竜田河にぞ幣はたむくる」
「このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」

 最後の歌は、百人一首に所収されている大変有名な菅原道真の歌です。

 今取り上げた歌は、どれも散る紅葉を「幣(ぬさ)」に見立てています。幣とは、いろんな布を小さく切ったものです。旅の安全を祈るために、道祖神の神様、つまり旅の神様の前で幣をまき散らしていたのです。